あふれる笑顔

ホテル

「圭ちゃん、楽しいねぇ~」

咲の屈託のない笑顔を、初めて見た。

二十歳…………いや、二十一歳の女の子らしい笑顔だ。

キャラクターのお土産を選び

絶叫マシーンに怯え

お化け屋敷を冷やかした。

「次は何がしたいんだ?
今日は、何でもつき合うから言って見ろ。」

「だったら…………
う~ん。」

そう言ったまま黙ってしまった。

「どうした?」

さっきまでのテンションから変わり、大人しくなった咲に聞いてみると

「遊園地も初めてだけど………
好きなことをして良いって、言われたことも初めてだから
何をしたいのかが分からないの」と。

我慢ばかりしてきた咲には、自由に選ぶ事さえ難しいみたいだ。

「だったら、片っ端から乗って行こう!
俺も随分ご無沙汰だから
知らない者同士で……新鮮だろう?
そうと決まったら、早速並ぶぞ!」

バイキングに絶叫物、コーヒーカップに空中ブランコと

とにかく行列の少ない物から乗って行った。

「遊園地って………
楽しいけど、ハード!!」

それが遊園地デビューの咲の感想だった。
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