あふれる笑顔

家族

「ただいまぁ!!
笹兄、見て!!」

カウベルの響くドアを開け

店に飛び込む咲。

Bar の準備をするささは、カウンター越しに苦笑いだ。

芸能人のような指輪の披露をして

満面な笑顔を見せる咲。

クスッと笑って

「良かったな。」と呟くささは

溺愛するお兄ちゃんの顔をしていた。

「お土産はねぇ~」

すっかり妹の顔に戻った咲は

三日ぶりのささに、ヤキモチを妬きたくなるほどベッタリだ。

「咲。
圭哉が睨んでる。」

ニヤニヤしながら俺を見てからかうささに

「圭ちゃんは、そんな事しないよ!
だって、私と圭ちゃんは結婚するんだもん。
ねぇ~。」と

なんとも無邪気にくっついてきた。

咲さん…………胸が当たってるんだけど…………。

ささも気づいたらしく

「咲、圭哉の目尻が下がってるぞ。」と笑ってる。

ウルサイ!

バラすなよ。

睨む俺に

『結婚するんだもん。』と言ったことを喜んだと思った咲が

「ねっ!
圭ちゃん。」と

もっと引っ付いてきた。

これには俺も、ドキドキがおさまらず

ささは涙を浮かべて笑い

「咲、そろそろ店を開けるから
明日またな。
明日は朝から付き合ってやるよ。」とやんわり帰らせるように促した。
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