新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
『待った、「結婚はまだ早い」って話じゃなくて? “ソレ”──結婚自体がないって話を、最初にしてたって?』

『そうだ。向こうから付き合って欲しいと言われて「俺結婚願望ないから、そこを目指してるなら時間の無駄だからやめておけ」って答えたんだけど、「それでもいい」って言うから……付き合ったのに』

『うわっ……うわあ、メガネイケメンオチサツキこわあ~~この歳で結婚願望ない宣言してるのもビビるけど、言い方ってもんがあるだろ~』

『人を珍獣の学名みたいに呼ぶな』



それからしばらく、同期メンズたちは越智くんの冷めた恋愛観をネタにワイワイしていた。

そのうち越智くんが耐えかねたように輪の中から立ち上がり、テーブルの端に座っていた私の方までやってくる。



『ごめん宮坂、ここ避難させて。アイツらうるさい』

『あはは、いいよー』



笑って快く迎えると、越智くんもホッとしたように表情を和らげて私の左隣に腰を下ろした。

向こうから『越智ー! 逃げるなんて卑怯だぞー!』との声が聞こえたけれど、彼は完全に聞こえないフリをしている。



『あ、これ、よかったら飲んでいいよ。私まだこっちあるから』



持っているグラスを軽く掲げながら、さっき注文して届いたばかりのハイボールのグラスをテーブルの上で押しやる。

越智くんは『ありがとう』と言ってすんなりそれを受け取り、口をつけた。
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