新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「愛してる、礼。だから一生、そばにいてくれ」



不意打ちの甘いセリフに、またかーっと顔に熱が上った。

動揺で目を泳がしかけて、けれども勇気を出し、まっすぐ彼と視線を合わせる。



「……はい。私も、一生愛しています」



掴まれた手を握り返しながら、ふにゃりと破顔してうなずいた。

返事を聞いてうれしそうに頬を緩めた皐月くんが、そのまま私の頬にキスを落とす。



「さて。それじゃあ俺は、愛しの奥さんのかわいいお願いのために、全力でがんばろうかな」



そう話す彼の顔が意地悪そうなものになっているのを確認して、今さらながら私は焦る。



「あの……手加減してくれても、いいんだよ……?」

「善処はしてみる。けど、実際可能かどうかは試してみないとわからないな」



イタズラっぽく答えた皐月くんにまた言葉を返すより早く、甘いキスが私の抗議を喉の奥へと押し込めた。

身体と心をとろけさせるその唇に酔いしれながら、私は病院のベッドの上で不安の中目覚めた、過去の自分に思いを馳せる。

……大丈夫だよ。もうすぐあなたを迎えに来て救いあげてくれる人は、こんなにも、優しくて愛情深い人だから。

あなたもすぐに、大好きになるから。

たとえ記憶を失くしても、何度でも、また彼に恋をする。

誓いのキスを私も同じく、彼の薬指に光るリングにそっと落とした。
< 183 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop