新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
エピローグ


「んー、迷うなあ……」



9月下旬の、ある夜のこと。

入浴も済ませてすっかりくつろぎスタイルの私は、ソファの上で体育座りをしながら手もとのスマホと睨めっこしていた。

先ほどからむむむ、と眉間にシワを寄せっぱなしの私を見て、お風呂上がりの清潔な香りをまとう皐月くんが不思議そうに首をかしげる。



「さっきから、何を見てるんだ?」

「うん? あのね、これなんだけど」



彼特製の冷たいミルクセーキが入ったグラスをふたつテーブルに置いて隣に腰かけた皐月くんに、くるりとスマホの画面を見せる。

そこに写っているのは、つい先日とあるフォトスタジオで真っ白なウェディングドレスに身を包んだ、私の姿だ。



「これと、これと、あとこっち。どれを着ようかまだ迷ってて……」



入籍から1年以上も経ってから、ようやく本物の夫婦になれた私たち。

今さら、式を挙げることまではしようと思わなかったけれど……せっかくだからと、ウェディングフォトだけでも撮ろうかという話になったのだ。

そして2日前の日曜、お互いの休日が被っているその日に、衣装合わせのため予約したフォトスタジオに行ってきたんだけど──……。



「ドレスの形も、色々あって迷っちゃうね。実は白無垢とカラードレスの方も、まだ決められてないんだけど」



苦笑しながら私は話す。撮影当日は、私も皐月くんもそれぞれ洋装が2着、和装を1着ずつ着ることになっていた。

皐月くんは私から受け取ったスマホをじっくり眺めてから、こともなげに言う。



「気になるもの全部着ればいい。礼なら全部似合う」

「いやいやいや、ドレスだってタダじゃないんだよ?! そんなマリーアントワネットみたいなことできないよ……!」
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