新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
思わず反論する私に対し、彼はあっさり「気にしなくていいのに」とつぶやきながら再びスマホへ視線を戻す。

また少しの間ののち、すっと、開いていた画面を私に見せてきた。



「なら、白はこのドレスがいいんじゃないか?」

「え……これ?」



皐月くんが示した写真が予想外で、つい目をまたたかせる。

だってそれは、私が最初に候補に上げた3着とは、また違ったものだったからだ。

……うーん。このドレスは……。



「ちょっと、私にはかわいすぎないかな……スタッフさんは、オススメだって言ってたけど」



プリンセスラインの、真っ白なレースとリボンがたっぷりしているちょっとアンティークな形のドレス。

たしかに、素敵なデザインだと思う。
だけどそれが自分に似合うかどうかは、また別の話で。



「私の顔的にも年齢的にも、もっとシンプルなデザインの方が良くないかなあ」

「これだって礼に似合うよ、絶対。それに……ふわっふわなドレス着るの、夢だったんだろ?」



イタズラっぽく笑いながら、皐月くんが言った。

不意を突かれた私は目を丸くし、それからすぐに“悔しい”という感情がわき起こる。



「……よく覚えてるね。ほんと皐月くんって、記憶力すごい」



まさか、社会人になってすぐの頃にお酒の席でした取り留めのない話を、しっかり覚えていてくれたなんて。

何となく恥ずかしくなり、照れ隠しにわざとらしくつぶやく。

皐月くんは、悪びれもせずに目を細めて私の顔を覗き込んだ。



「そりゃあ、自分にとって特別なオンナノコのことは、何でも知りたいし、覚えてるものだろ」

「そ、そうですか」

「うん。ちなみに、花火大会のあの夜、真っ赤な顔で恥じらいながら俺のこと誘ってきた礼の姿は、今でもたまに思い出して噛みしめるな。かわいすぎて」

「なっ?!」
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