また、いつか
「今日は何をされていたのですか?」

部屋に入りながら治憲(はるのり)がたずねると、幸姫(よしひめ)は頬を染めながらニッコリ笑った。

彼女の前には手作りの人形が何体も並んでいて、人形遊びをしていたことがわかる。

全部、治憲が幸姫の為に自ら縫ってやったものだ。

幸姫はその中の一体を手に取ると、治憲の方に突き出した。

「よし」

そう言ってさらにニッコリ笑う。

「?」

治憲は突き出された人形を手に取ると、その顔を見て目を見開いた。

「…これは、姫ですか?」

「はい」

「ああ…、なんて上手に描けているんでしょう。
姫にそっくりですね」

その治憲の言葉に幸姫は嬉しそうに微笑むと、もう一体人形を取り上げ、彼の方に向けた。

「との」

「…え…?」

治憲が人形の顔を覗き込む。

「との」

「これは…、私ですか?」

「よし、との」

幸姫が2体の人形を寄り添わせるように並べた。

「ああ…、幸せそうですね」

そう言うと、治憲の瞳から涙が一雫こぼれた。

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