藍と未来の一つ屋根の下
一回、してみる?

2人でバックれようよ

放課後のいつものファミレスで、未来と美咲とカナとリー子はメイク道具を広げている。


「じゃあミクってキスとか全部まだ!?」


スマホで文章を打ち続けながら美咲が言った。


「私もまだだよ」


と、カナ。


「まじで一回経験しといた方がいいって。ねえリー子?」


リー子は髪の量が少ないサラサラのボブをワニクリップで留めて、リップグロスを塗っている。


「ミクとカナのペースでいいんじゃん?」


「カナは癒し系だから絶対好きなタイプいる」


カナはセミロングをゆるく巻いた髪に大きな黒ぶちのメガネをかけている。


「あ、来るって」


美咲がスマホを覗きながら言った。


「前のカラオケの時きたマー君の友達いたでしょー?2人くるってー」


「あーなんだっけ?メガネ君とK大だっけ」


美咲の彼氏のマー君は3つ年上の社会人。工場で働いているみたいで、腰にジャラジャラ鎖みたいなのをつけてた気がする。


「K大がミクのこと気に入ってるって」


「リー子は彼氏いるからパス」


藍がばーちゃんのご飯を持ってきてくれた日から一週間。タッパーは洗ったままうちのキッチンに置いたまま。


早く返しに行かなきゃ。ばーちゃんの顔もずっと見てない。


でもバイトの日は帰りが遅くなるし、バイトがない日も美咲たちに誘われる。


藍からのLINEも、あれ以来ない。
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