一、はじまりはタケノコの天ぷら


「アイリーン様、頼まれていたものを手に入れましたよ!」
 厨房で働くメイドがこっそりと耳打ちしてくる。
「まあ! それはそれは……!」
 私はにんまりと含み笑いを浮かべた。これであれができると思うとつい顔がにやけてしまう。
「ついにですね、アイリーン様!」
「ええ……! では決行は本日ということでよろしいかしら?」
「かしこまりました! こちらは万全に準備を整えておきますね」
 ふたりで頷き合うと、何事もなかったかのようにその場を離れた。

 それから数時間後――。
「はあ……おいしくできましたね……!」
「やっぱりこの時季といえばタケノコよね! 天ぷらにして正解だったわ」
 外は薄づきにした衣でサクサクに、中はジューシーでありながら独特のコリっとした歯ごたえを生かした食感に仕上げたタケノコの天ぷらは抜群のおいしさだった。
 キッチンメイドのエマが手に入れたものは、春のこの時季になると出回ってくるタケノコだ。彼女の実家には竹林があるらしく、そこで毎年採れると言う。時間が経つとアク抜きが必要になるが、新鮮なものであればそのまま食べられる。
 今朝採れたてを持ってきてくれたため、生のまま天ぷらにしてみたが、これが格別な味わいだったのだ。
 そもそもこの館にいる限りタケノコを材料とすることが少ない。見た目も味も調理法も高貴な身分の人が食べるにはあまりふさわしくないようなのだ。