鍋がコトコトと煮え、フライパンでは肉の焼けるジューッという音がする。
 まな板の上ではトントンと包丁がリズミカルに鳴り、薪釜の中では合いの手のようにパチッと薪がはぜる。
 厨房に鳴り響く音は幸せの音だ。
 日本人だった前世でも、朝起きたときに台所からこの音が聞こえると、一日が気分良く過ごせるような気がした。
 それは世界が変わっても同じだと思う。
 王子宮の厨房をきれいにした次の日からさっそくお料理に使わせてもらう。
 材料や薪はさすがに王子宮にはないので、離れから持ち込んだ。
 そして、初めて扱う薪釜。
 エマといろいろ相談しながら、焼いてみることにする。
 やっぱり薪釜といえば、ピザだ。
 薄くカリッとしつつも、弾力のある生地が焼き上がると思うと、楽しみで仕方ない。
 ただ、エマはピザを知らないので、教えながら作っていくことになった。
 まずは生地作りからだ。