王国軍の寮の中にある自室のドアがノックされる。
「はい」
 返答をするとドアが開き、相手が入室してきた。
「ほい、お嬢様からお届け物ですよ」
 そう言いつつバスケットを見せるのはテオ――僕の腹心の部下であるテオドールだ。
「『殿下が甘いものはそれほど得意じゃないと伺ったので、ブランデーケーキにしてみました』だって」
 アイリーン嬢の声まねなのだろう。テオは裏声で言う。
「似てない。気色悪い」
「えー! 殿下ったらひどい~!」
 なおも女っぽいしゃべりかたを続けるテオに僕はハァとため息を吐く。
「それで頼んでいた件はどうだ?」
 無駄な茶番を終わらせるべく、話題を変える。