宝石姫と我が儘な教え子

lapis side 再会

それから七日ほど経ったある日のこと。


私は手に入る書物を片っ端から読んで、奇跡について調べ尽くしていた。食事と寝るとき以外はずっと書庫に籠っていたほどだ。それでも何も手がかりは得られず、ぐったりとベッドに倒れ込む。


「もう、どうしたらいいんだろ…」


すぐに火山が収まるものだと信じていた神官たちには、日に日に白い目で見られている。

それもそうだろう。国庫を空っぽにしておいて『できません』は通用しない。私だって奇跡を起こすのが巫女としての使命だと心得てる。そのために全力を尽くすつもり。



だけど、



「会いたいな…」


行き場のない想いは日増に強くなるばかりだった。会えなくなってからかなり経っているのに、脳裏に焼き付いた姿は少しも色褪せない。

悪戯っ子のようでいて、目が眩むほどの甘さを湛えた笑顔。きっと宗次郎くんは自分の微笑みがどれ程魅力的か知りつくしてるに違いない。彼の笑顔に何故か悔しい気持ちを抱きつつ、どうしても目が離せなかった。



「…描いちゃった」


頭に思い描くだけでは飽きたらずに、羊皮紙にペンで宗次郎くんを描いていた。我ながら呆れたものだ。この世界では紙は貴重品で、本当はこんな落書きに使ったらいけない。


でも自画自賛になってしまうけれど、ラフに描いたスケッチは宗次郎くんの端正な面立ちをしっかりと写し取っていた。モデルを見もせず思い通りにデッサンできるなんて、どれだけ宗次郎くんを見つめてきたんだか。


「しまっておこうかな」


身の回りのお世話をしてくれる女官たちに見つからないように、重要文書に混ぜて隠しておくことにした。毎日、夜寝る前に少しずつ色を付けようとわくわくした気持ちで眠りにつく。


その翌朝のこと
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