今夜、最強総長の熱い体温に溺れる。 - DARK&COLD -


国吉くんは話がよく読めない、という顔をしながらも

「旗中は、俺にどうしてほしいの」

誰にも聞こえない、小さな小さな声でたずねる。



「……早くここから逃げたい、」


いよいよ涙が滲んできた。

国吉くんは私の手をとってみんなのほうを向く。


「悪いけど、俺たち先に帰るから」


静かな声でそう言って、私の手を引いた。


二人に集中していたみんなの視線が、こちらに流れる。

自分で逃げたいと言っておきながら、本当に連れ出してくれるとは思っていなくて、テーブルの上にお金を置いた国吉くんの手をぼんやりと見つめる。



「旗中、行こう」


再び腕を引かれ、皆に背を向けた。



「──瑠花」

ビクリと肩が上がる。


「瑠花」

心なしか、いつもより強い響き。


振り向かない。

ここで振り向いてしまったら、永遠に振り切ることができない気がする。
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