秘密にしないスキャンダル
助けてくれる?
『みんなー!楽しんでますかー!?』

楽しんでるー!!

『次はあの話題の映画の主題歌歌います!
ダンスはないから転けたりとかの失敗はしないよー』

えー!!

『残念がらないっ!大勢の前で転ける方は恥ずかしいんだからね!?
では、聞いてください』

一度マイクを下ろし陽人と背中合わせで立つ。
一瞬照明が暗くなるとすぐに青白いスポットライトが当てられて音楽が流れ出す。
静かに歌いながら勇菜はこのあとの事を考えて思わず微笑んでしまいそうになるのを必死で我慢した。

ーーねえ、いつもはこの曲、少し切ない感じがするけど今日はなんか……。

ーーうん、わたしも思った。
今日はなんか少し、ほんのり胸があたたかくなる感じがする。

ーーこのサビの“会いたい”って繰り返してるところなんて、前は恋人と会えなくて寂しいって感じだったのに、今日は恋人と早く会いたくて待ち遠しい、みたいな……。

そんな会話が観客席で話されていることは知らずに勇菜は今まで以上に気持ちを込めて歌った。
今までとは違う想いを乗せて歌ったこの曲は、後に感情の込め方によって全然違う印象になる不思議な曲と話題になるのだけれど今はまだそのことは知るよしもなかった。
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