歩幅を狭めたつもりだったけど、楽しく話をしていたらあっという間に駅に到着してしまった。
改札前で立ち止まり、改めて明るいところで彼の顔を見るとなんだか恥ずかしくなる。

「あ、酔ってないと思ってたけど雅也くん意外と顔赤かったね」

「手繋いで歩いたから照れてる方が大きいかも」

気恥ずかしさを紛らわすためのセリフだったのに、むしろ余計に照れ臭くなってしまった。


「さっきからよくそんなに続けてかわいい言葉が出てくるね」

「えー、狙ってないんだけどな」

思わず2人で笑い合った。

「じゃあまた明日。少し名残惜しいけど」

そう言って手を離そうとすると、おもむろに手を握る力が強まって体を引き寄せられていた。

「うん、また明日。帰り道気をつけてね。また連絡する」

耳元でそう言われて、何が起こっているのかようやく把握した。
心地よさと恥ずかしさと半々なような、変な感情。
ヒールを履いても肩に顔を埋められる身長差も、少し高めな彼の体温も全てがちょうどいい。

そっと体を離して見つめ合うと思わずキスをねだりそうになったけど、ここは我慢。

「さっきからドキドキして困るから!また明日楽しみにしてるね」

出来るだけ冷静を装いそう言って手を振った。

「ごめん、思わず考えるより先に体が動いちゃった。
俺も楽しみにしてるね」

前のお別れの挨拶に比べて随分と距離が縮んだなと思いつつ、どう転ぶかわからない明日のデートのことを思うと自然と浮き足立ってる自分がいることに気づいた。

改札をくぐって一度振り向いて、当たり前のようにこちらに手を振ってくれる彼に安堵する。
こんな感じが続くなら、この人と付き合ってもいいかもな。自分にしたら珍しくそんなことを思った。