稲荷と神の縁結び
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あれは四年前の九月のこと。


第一週目を丸々夏休みを頂いていたので、九月の二週目の月曜日。
その日は早番で、一番乗りで出勤した私は開店作業を行っていた。


「こはるちゃんおはよう」

上の事務所から下りてきたのは、当時の店長‐と、初めて見る男の人。

「言ったと思うけど、先週からうちに入ってくれた清貴さん。永江清貴さんね」


少し前から、社長に「他で働いてた息子を呼び戻すからよろしく」とは言われていた。
だからまぁ、この人か……なんて言うのが最初の印象。
狸に似た社長の息子の割には、さわやかな好青年だな…とは。


「時松こはるです、よろしくお願いいたします」
そうペコリと御辞儀をすると「清貴と呼んでください、よろしく」とまぁ今では想像つかないぐらい、丁寧な御辞儀をされたものだ。


「知ってると思うけど、こはるちゃんがうちのNo.1ですから。清貴さん、見習ってくださいね」

「えぇ知ってますよ。色々教えてください。こはるさん…でいいんですか?」

当時この店では、私が一番年下で…しかも一番近い人でも一回りも年の差があったので、みんな私を『こはるちゃん』と呼んでいた。

「好きに呼んでください、清貴さん」

「わかりました、よろしくお願いいたします」
そうまた丁寧にお辞儀をしていた。
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