キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
⑥真夏のアバンチュール(前編)
 うっとうしい雨の季節が過ぎて、七月がやってきた。夏休みも間近の放課後、私は美代と一緒にファミレスに来ている。

「それで、お前らはどうしてここにいるわけ?」

 ウエイトレス姿の楓が、お冷を手に苦笑いしていた。

「今日は吹奏楽部が休みなのよ」

「え、暇だったから」

 美代に続いて言うと、楓の視線が鋭くなる。楓はおもむろにテーブル備え付きのタバスコを手を伸ばすと、問答無用で私のお冷にドバドバと注ぎ始めた。

「ちょっ、嫌がらせ!?」

 オレンジ色の油がプヨプヨと水面に浮かんでる。これじゃあ飲めないじゃないかと、私は楓の腕をバシッと叩いた。

「私のお冷に、なにしてくれてんのよ!」

「お前の発言にムカついたから」

「はぁ?」

「暇だからって、言ったからだろ」

 ボソッと文句をこぼした楓に、私はキョトンとする。

 それって……。私が楓に会いに来たって言わなかったから、落ち込んでるってこと? 楓のことだから、仕事を邪魔するなら帰れって言うと思ってたのに。楓の考えていることが、まったくわからない。

 瞬きを繰り返して楓をじっと見ると、さりげなく目をそらされてしまった。

「あ、うーん……泊りかぁ」

    

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