お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
手負いの王妃と造幣局の悪魔
夜会を終えたロザリーたちがイートン伯爵邸に戻ってきたのは、もう使用人も寝静まったころだ。
執事とお付きの侍女たちだけが起きて待っていてくれて、寝支度の手伝いをしてくれた。
その日は直ぐ眠りにつき、ケネスとともにレイモンドを捕まえたのは翌日の朝食後だ。
話を聞いたレイモンドは、口を押さえて考え込む。
「縁談? ……まさか本当だったのか。てっきり、俺に諦めさせるための虚言だと思っていたのに」
「子爵家に嫁入りしたとはいえ、オードリー殿は元々平民だ。子どももいる。こう言ってはなんだが、貴族の男には再婚するメリットはない。だから考えられるのは、オードリー自身を気に入ったか、子爵家からよっぽどの支度金を出す話になっているか……だね」
貴族ならではの視点でケネスが補足する。
「そこまでして、俺には渡したくないって言うのか。……くそっ」
子爵家の門さえくぐれない。呼び出してももらえないレイモンドには、まさになす術がない。
「しかも、相手は伯爵様か……」
ギリ……と唇を噛みしめるレイモンドに、ロザリーの胸まで痛くなる。
連絡が途絶えて、大事な切り株亭の仕事までなげうってここまで来た彼は、誰よりもオードリーを思っているはずなのに。
「レイモンドはまだオードリーに会えていなかったのかい? イートン伯爵家に勤めていると言えば多少心証は違うと思うよ」
執事とお付きの侍女たちだけが起きて待っていてくれて、寝支度の手伝いをしてくれた。
その日は直ぐ眠りにつき、ケネスとともにレイモンドを捕まえたのは翌日の朝食後だ。
話を聞いたレイモンドは、口を押さえて考え込む。
「縁談? ……まさか本当だったのか。てっきり、俺に諦めさせるための虚言だと思っていたのに」
「子爵家に嫁入りしたとはいえ、オードリー殿は元々平民だ。子どももいる。こう言ってはなんだが、貴族の男には再婚するメリットはない。だから考えられるのは、オードリー自身を気に入ったか、子爵家からよっぽどの支度金を出す話になっているか……だね」
貴族ならではの視点でケネスが補足する。
「そこまでして、俺には渡したくないって言うのか。……くそっ」
子爵家の門さえくぐれない。呼び出してももらえないレイモンドには、まさになす術がない。
「しかも、相手は伯爵様か……」
ギリ……と唇を噛みしめるレイモンドに、ロザリーの胸まで痛くなる。
連絡が途絶えて、大事な切り株亭の仕事までなげうってここまで来た彼は、誰よりもオードリーを思っているはずなのに。
「レイモンドはまだオードリーに会えていなかったのかい? イートン伯爵家に勤めていると言えば多少心証は違うと思うよ」