お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
潜入! オルコット邸


それから、ロザリーはカイラの話し相手をしながら、日々を過ごしていた。
一応毒見として先に食事のチェックはしているが、特におかしなこともなく、イートン伯爵邸にいるときよりも穏やかで平和な日常を送っていた。

ザックとケネスは毎日のようにやって来る。とはいえ、彼らには執務もあり、訪れる時間は主に夕方から夜にかけてだ。
時間短縮も兼ね、一緒に夕食を取るということで調整してある。

ザックが来る前の一時間は、女性二人の身だしなみチェックだ。
ロザリーはカイラに習って、髪を結う練習をしている。

「どうですか? できてます?」

「少し曲がったかしら。でもこうすれば平気よ」

カイラは編み込んだ毛先をくるりと内側に丸め込み、引き出しから髪飾りを取り出し、つけてくれた。一気に華やかな印象になる。

「ほら、どう? 可愛いわ」

「ありがとうございます! カイラ様。髪飾りまで貸していただいて」

「いいのよ。あなたを可愛くしておくとアイザックが喜ぶんだもの。……ちょっとホッとしているの。あなたといるときのアイザックは、昔みたいに素直で穏やかで。あなたのような素朴な子を選んでくれて、嬉しかった。でもその反面心配もしているのよ。あなたは私のように、王宮になじめないんじゃないかと思って」

「私がですか?」

カイラは目を伏せ、苦笑を浮かべる。唇に添えられた指が、小さく震えていた。
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