偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
夜更けの電話

「高坂さん、ふのりの天ぷらが揚がりました。チェックお願いします」

 市ノ瀬くんに呼ばれて振り返る。

「了解。すぐ行く」

 お見合いから四日後の木曜日。世間はゴールデンウィーク真っ只中、私は市ノ瀬くんとふたりで新メニューを仕上げに取り掛かっていた。

「うん、いいね。このサクサクした食感もいいし、噛めば噛むほど磯の香りが口中に広がる。これなら逢坂社長もきっと……」

 そう名前を口にした途端、頭の中にボンッと彼の笑顔が現れる。突然のことに戸惑ってしまった私は、目を左右に揺らした。

「高坂さん顔が赤いですけど、どうかしましたか?」

 え? 顔が赤いですって!?

 パタパタとスリッパを鳴らし、大急ぎでキッチンに備わっている洗面所へと向かう。

 あ、ホントだ、耳まで赤いじゃない。ちょっと逢坂社長の顔を思い出しただけなのに、私ったら何顔を赤くしてるのよ!



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