偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
うれしはずかしドライブデート

「お母さん! なんでもっと早く起こしてくれなかったのよ!」

 キッチンで洗い物をしている母に言葉を投げると、洗面所へと駆け込む。

「起こしてくれなんて聞いてないじゃない。どこかへ出かけるの?」

 洗面所を覗きながらそういう母の問いかけに、顔を洗っていた手が止まる。

 あ、そうか。真史さんとのデートは昨夜遅くに決まったことで、お母さんには何も言ってなかったんだった。

 偽りの恋人とはいえ、デートはデート。男性とふたりっきりで出かけたことのない私はデートの言葉が頭から離れず、気持ちが高ぶってしまいなかなか眠りにつくことができなかった。せっかくアラームをセットしたというのに、目が覚めたのは六時少し前。

 真史さんが迎えに来る七時に間に合わないこともないけれど、これっぽっちの余裕もない。

 洗顔と歯磨きは終えたけれど、デートって何を着ていけばいいの?何を持っていけばいいの?と悩みは尽きない。



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