天然お嬢様の恋はどこまでもマイペース
SIDE 泰介

お見合い

はあー。
思わず溜息が出た。

一体何が悲しくて、俺はここにいるんだ。
仕事が忙しくて、自宅マンションに帰る時間さえも惜しいくらいなのに。

「お待たせしました」
運ばれてきたコーヒー。

都心の有名ホテルだけあって、おしゃれなカップ。
コーヒーも雑味のないいい味だ。
こんなにゆっくりとコーヒーを味わうのはいつぶりだろうか?

自分の力を信じて大学在学中に起業し、以来8年。
海のものとも山のものともわからない俺を応援し続けてくれたメインバンクの支店長に、どうしてもと言われ断れなかったお見合いの席。
約束の時間よりも随分と早く来てコーヒーを飲んでいる俺の行動が、気の重さを表している。

「はぁー、28でお見合いなんてなあ」
無意識に口に出てしまった。
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