桜の花が散る頃に
STORY:ONE「よく知る男」

夏実の秘密

[夏実の秘密]start


時は来たりて夏休み。

海!山!プール!!

なーんて今頃、エンジョイしてる予定だったのに


「塩谷また間違ってる!圧力じゃ無くて重力だって、これで11回目な!?ねーもー先生帰って仮面ヒーローズの録画見たいんだけど!!」

「遼河先生、集中出来ないので黙ってもらって良いですか。」

「遼河せんせー、秋人につきっきりじゃなくてこっちも教えてよー。てか虎丸、冬季の制服着てて暑くないの?」

「仕方ないじゃん、学校で勉強する手前タトゥー全開はまずいし。」

なぜか結城以外全員、揃って学校でーす☆

なんでこうなったかって、それは…



ーーーーーーーーーーーーーー

「塩谷、お前さん…なんで追試の方が点数悪いんだよ!!五教科全部、夏休み集中補習な!!」

ってガッちゃんに言われて、


「先生、それ私も行っていい!?補習の片手間とかで物理と化学教えてくれたら嬉しいんだけど」


って夏実が言い出して、だったら僕も俺もって男二人が言い出すから、こうなった。

結城はと言うと、

「ユキちゃんは〜、サマーイベントと撮影で忙しいのでパスぅ♡」

との事らしい。


で、何が問題かと言うと、


「ねえ塩谷、一教科につき補習は何分?」

「15分補習で、5分で理解度テストやるから20分…っすね!」

「だよね?そうだよね?じゃあ、今日君が学校に来てから物理の補習始めて、何分経った?」

「んー、2時間…?」

「6回も同じ授業受けて、6回も同じテスト受けたのに、なんで毎回理解度テストの点数が下がってるんだ!?先生は君が理解できない!!」


そう、物理まーったく分かんない。

問題なのは僕の脳みそ、テヘペロ☆ってやってる場合か。

一生抜け出せないよ補習から!
物理ほんとにわからなすぎて一年かけても理解できない気がする!!

本当にヤバいと思って、7回目の授業は今までより真面目に聞いた。

それで、7回目のテストでギリギリ合格点ゲット!!

ガッちゃんが、泣きながら
「やっと帰れるううううううう」
と叫んだ。

俺もおんなじ事思ったわー…

全力で背伸びしていると、スマホを見ていた虎丸が、「あ。」といきなり呟いた。


「結城が今仕事終わったって。丁度塩谷の補習も終わったし、俺もバイトまでまだ時間あるし…みんなでどっか行く?」


珍しく虎丸が遊びに誘ったから、こりゃ行くっきゃねーと思って前のめりになった俺より先に、夏実が口を出した。


「ごっめ…私もう帰らなきゃ。私抜きで遊んで!」

夏実の言葉に、俺は咄嗟に時計を見た。
それは俺の最近の習慣。

やっぱり、時間は5時ちょっと前を指していた。

夏実は一学期中、俺達を含め他の誰とも、放課後に一緒に遊びに行くとか寄り道するとか、した事がない。

4時55分にホームルームが終わると、気持ち急ぎ足で帰っていくのだ。

虎丸の家に行った日はたまたま午前放課だったけど、やっぱりその日も5時前になるとぶっ倒れた虎丸を俺に任せて、そそくさと帰っていった。

夏実は何かを隠してる。
そう、直感で感じる。


「…なあ、気にならねえ?」

「は?何が。」

「夏実が何を隠してんのかだよ。」

「僕も同感だな。つけてみるか?」


いけないことと分かっていても、俺は知りたいというその衝動を止められなかった。
< 19 / 24 >

この作品をシェア

pagetop