クールな弁護士の一途な熱情
8.特別




『好きだよ、果穂』



あの言葉が、酔った勢いだなんてわかってる。

だけど、それでもやっぱり嬉しくて。

彼の声が、耳の奥から消えない。







『で?結局会社戻るんだ?』



静の家に泊まった日から4日ほどが経った、木曜日の夜。

私は自宅でお風呂上がりに髪を乾かしながら、スマートフォン片手に映美と電話をする。



「うん。部署は変わるけど、これまで通り企画の仕事をさせてもらうつもり」

『いやー、よかったよかった。欲を言えばあと5発は殴ってほしかったけど』

「あはは、5発って」



電話の向こうでけらけらと笑う映美に私も笑った。



あれから、何日も経たないうちに上原さんから連絡があり、異動先のブランドが決まった。

これまでのデパコスブランドとは違って、まだ立ち上げたての低価格の新規ブランド。

だけどそちらも『入江さんならぜひ』と快く受け入れてくれたそう。

ちょうどそのブランドでひとり寿退社することもあり、入れ替わりで9月頭から復帰することとなった。



静たちにもそのことは伝え、バイトは8月下旬まで、と取り決めた。

それを聞いた花村さんと壇さんもいやな顔ひとつせず、喜んでくれた。



『けどよかった、これまでと声も全然違うもんね』

「そうかな?」

『うん。この前より明るい声してる』



やっぱり、これまで声も沈んでいたのだろうか。

映美の声も安心したようだ。



思っていた以上に心配かけてしまっていたのかも。そう思うと、ちょっと申し訳ない。


< 115 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop