相思相愛ですがなにか?
7.婚約パーティー

春も終わりに差し掛かり、夏の訪れが待ち遠しくなった頃、大安吉日の良き日を選び、藤堂家と南城家、両家により結納が行われた。

南城家に縁のある老舗の料亭の一室では、長ったらしい口上のやり取りの末、無事結納品と受書の交換が完了したのだった。

「本日は私共のためにこのような席を設けて頂きありがとうございます。今日、婚約できましたのも両家の皆様のご協力のおかげです。今後ともよろしくお願いします」

結納の締めとして両家に対して感謝の念を述べる伊織さんの凛々しい姿に、私は正座による脚の痺れをしばし忘れうっとりと見惚れていた。

結納品の中にある婚約指輪にまつわるエピソードを知っているのは、私と伊織さんしかいない。

結納は誰にも邪魔されることなくつつがなく終わり、この日をもって私と伊織さんは正式に婚約したのだった。

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