極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
想いの行方


「陽奈子ちゃん、ボーッとしてどうした? 新婚が物思いに耽るなんてさ」


店の奥にあるスタッフルームで先に昼休憩をとっていた陽奈子のもとにやって来た大和は、向かいの席の椅子を引いて座った。


「そんなことないですよ」


慌てて取り繕い、ペットボトルのお茶を飲む。
大和も休憩に入るのか、コンビニの袋からサンドイッチを取り出して「それならいいけど」と笑った。

貴行と結婚式をあげて一週間が経過。
彼が宣言した通り、現在も寝室は別である。

陽奈子の気持ちを最優先に考えて尊重してくれているのはわかったけれど、なんとなく拒絶された気がしてならない。
手を伸ばせば抱ける女がいるのに、貴行はそうしようと思わないみたいだ。
軽いキスはしても、それ以上は踏み込んでこない。

(もしかしたら、ほかに好きな女性がいるのかも……)

工場の技術狙いで結婚したのは、陽奈子も十分理解している。二億円もの借金の肩代わりも感謝しきれない。

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