極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
過去から解き放たれた夜


その日の朝。


『たまにはこちらでお茶でもご一緒しない?』


貴行を送り出した陽奈子に、彼の母親の阿佐美から電話が入った。

今日の陽奈子は仕事が休み。
阿佐美との距離を縮めるにはいい機会だろう。
貴行の話をいろいろと聞いてみたいし、好物も教えてもらいたい。

陽奈子は一も二もなく「よろしくお願いします」と答えた。

家を出るときの貴行は、いたって普通と変わらず。セクシーなルームウエアを着ていたのは、陽奈子の夢だったのではないかとすら思えてくる。

(今朝のことはいったん忘れよう。今はお母様とのティータイムを楽しむほうに意識を向けなくちゃ)

今日は家事代行サービスをキャンセルして、約束の三時に間に合うように掃除を済ませ、陽奈子行きつけのパティスリーでお気に入りのケーキを買ってきた。

午後三時の五分前。陽奈子が実家のチャイムを鳴らすと家政婦がすぐに顔を覗かせ、陽奈子をリビングへ案内した。

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