悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
もし運命を信じるならば

 あれからどんなに叫んでドアを叩いても助けはやって来ず、逃げられる場所を探しても真っ暗で何もわからない。
 さすがジェナジェマだ。二人が私を閉じ込めるのに最適と判断したこの小屋は、きっと二人の想像以上に私を苦しめている。
 
 そして一番辛いのは、寒さ。

 あの時おばさんの上着を借りておけば、と何度も思ったが、ないものはない。
 寒さによってじわじわと体力を奪われて行った私は、少しでも寒さが凌げるように床に丸まって倒れていた。

 苦しい。怖い。

 このままずっと誰にも気づかれずここにいたら、私はどうなるんだろうか。
 明日追い出される筈の私の姿がなければ、誰かが私を探してくれるだろうか。
 でもそれは早くても明日の朝――それまでこの寒さに耐えられる自信がない。
 
 あまりの寒さに歯はガチガチと鳴り、防寒具もない状況で自分で自分を強く抱き締める以外の術が見当たらない。

 ――同じ物置部屋で、こうも違うのか。昨日は温かくて幸せだったのに、今は気を抜くと凍え死んでしまいそうだ。

 昨日、アルとキスを交わしたことが遠い昔のように感じる。

「は、ははっ……」

 あまりに絶望的過ぎて、急に笑いがこみ上げてきた。
 いいや、もう笑うしかなかった。マリアにはこんなバッドエンドもあったのかと。

「ゲームでも、マリアが選ばれてたらこうなる運命だったのかしら……なんだ。やっぱりちゃんと予習しとけばよかったなぁ。そしたら回避できたのに。あははっ! あははは!」

 笑い飛ばさないと、最早生きてる心地がしなかった。

< 96 / 118 >

この作品をシェア

pagetop