愛を捧ぐフール【完】

愛を乞うフール(ファウスト)


「おかえり!ファウスト殿下、帰ってくるのが遅いじゃないか!僕本当に待ちくたびれちゃうかと思ったよ!」

「悪いね。会議が長引いたんだ、シスト」


 自室に帰るなり、先客は優雅に茶菓子を食べてリラックスしていたにも関わらず僕に向かって愚痴る。


 緩いウェーブの掛かった金髪に碧眼の彼は、鏡でも見ているかのように僕と瓜二つ。よく見比べないと誰にも分からない位そっくりである。


「えー、そうなの?何かあったの?」

「アルフィオが父上に既に決まっている婚約を破棄させるにはどうしていいかと聞いていてね……」

「アルフィオ殿下ぁ?僕あの殿下嫌いなんだよね。あの殿下の側近のフィリウス侯爵のガキも嫌い。だって、ファウスト殿下睨んでくるんだもん」


 口を尖らせて不満を爆発させるシストに、僕は思わず苦笑いをこぼした。ずっと前に僕の部下が僕の為に見つけてきた影武者、それがシストだ。


 シストは僕よりも年下ーークラリーチェとアルフィオと同い年だけれど、時々子供っぽさが残る反面、たまに大人びた考え方をする。


 幼い頃、シストの両親が重罪を犯して捕まった時、シストは孤児と同じく孤児院に入れられようとしていたが、僕の部下の提案で影武者をする事になった。
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