愛を捧ぐフール【完】
おとぎ話のフール達
 むかし、むかし。アルガイオという王国にとても若い王様がおりました。
 先王が若くして崩御し、まだ二十に届かないか位の王太子様が次の王様になる事に決まったのです。


 若い王様は王位につくと同時に、昔から妹のように可愛がってきた美しく、愛らしい有力貴族の少女を王妃に娶りました。


 それはそれは仲睦まじく、お似合いの夫妻だと国民は皆一様に騒ぎ立てたのです。
 王様は大層王妃様を可愛がられ、王妃様も王様を愛しているのは誰の目にも明らかでした。


 しかし、国王夫妻が結婚して1年が経った頃、アルガイオ王国内に流行病が広がりました。


 感染した者の半数は死ぬ。
 そんな酷く重い流行病に、王妃様が掛かってしまわれたのです。


 病が移る事を恐れて、周囲の者達は王様を王妃様へと近付けさせませんでした。


 王妃様を見舞う事すら出来ない王様は、神へと祈りを捧げました。
 愛する妻を神の御身元へと捧げられることの無いように、と。
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