アイスクリームと雪景色
めげない男
里村は一目惚れだと言った。

入社したその日、美帆に会った一瞬で恋に落ちたと、身ぶり手振りを交えて熱弁した。

「マジです。スッゲーキレイな人だからもう感動して、もう大変だったんですよ! 俺が今まで見てきた女子とはもう雲泥の差って感じで、大人っぽくて知性的で。その上、足が長くてスタイル最高で……」

乳牛の如くモウモウ繰り返すのを聞きながら、美帆は苦笑する。今まで見てきた女子というのはつまり、彼が付き合ってきた女の子達のことだろう。

年齢差を考えてみれば、それは雲泥の差に決まっている。どちらが雲で泥かはこのさい置いておくが、とにかく七つ年上の社会人の女が新鮮に映ったのは確かだろう。

「それに、すごく優しいし」

これには面映くなり、反論した。

「それは、里村くんが面倒見るべき後輩だから、そのように接してるだけよ」

「いえ、違います。あなたは優しい人です!」

美帆はやるせない息を吐き、きっぱりと言い切る相手に心中で忠告する。声に出しても、この状態では聞く耳を持たないだろう。
< 95 / 395 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop