【シナリオ版】釣った夫は腐ってました!~鈴ノ木夫妻の新婚事情~
10話 急接近した夜2
〇ベッドの中。夜。

吐息がかかるほど間近に、光一の美しい寝顔がある。
女の華よりきめ細やかなお肌に、長い睫毛。嫉妬する気もおきないほど完璧な美貌だ。
その彼から、すーすーという規則正しい寝息が聞こえてくる。

華(ーー他人がいると落ち着かないとか言ってたわりに、ずいぶん熟睡してるし。
だいたい、こういうシチュエーションで相手が気になって眠れないっていうのは男性側
の役割なんじゃ……)

華「はぁ~」
もやもやとした心の叫びを、華はため息にかえて吐き出した。

さかのぼること三十分前。ふたりはとてもいい雰囲気だった。
甘ったるいような、くすぐったいような、そんな空気に包まれていた……と思う。
思いたい。なによりも!めずらしく、というか、たぶん初めて、華は光一からの『好き』
を感じていた。

それなのに、なぜ華がため息をつくような事態になっているのかというと、彼があっさりと
こう言ったからだ。

光一『よく考えたら、痴漢にあいかけたのにそんな気分にもならないか。ま、今日はゆっくり休め』
光一は幼い子どもを寝かしつけるように、華の背中に手を回しポンポンと優しく叩いた。

その紳士的な気遣い自体は嬉しいし、そもそも『寝室に入るな』だったのが『添い寝』
までランクアップしたのだから喜ぶべきところだろう。
実際、この無防備な寝顔を思いきり眺めていられることは、すごく幸せではあった。

でも、どうしても、もやもやする気持ちを消すことができない。

付き合っているときから感じていたことだけど、光一はガツガツしたところがまったく
ない。もてる男の余裕ってやつだろう。そこが魅力になって、ますます彼はもてまくるのだけど……女としては少し寂しくもある。














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