後輩はレンタル彼氏
4話 わんこ系後輩

奈帆たちのオフィスにて。
仕事は食品商社の営業。
直属の部下である津雲と奈帆の席は隣同士。

 朝、出社してデスクに鞄を置いていると津雲がやってくる。
 土曜の『レンタル彼氏』としてのデートを思い出して、上手く顔が見られない。

津雲「奈帆さん。おはようございます!」

奈帆(な、奈帆さんだなんて!)

 ドギマギしつつ、いつもの尻尾があったら振り切れんばかりに振っていそうな、わんこっぽい声に些か安堵する。

同僚男「本当、つぐは藤野さんに懐いてるな。お手ってしたらするんじゃないのか」

 津雲はプィッと顔を背ける。

津雲「俺、奈帆さんにしかしませんから」

同僚男「ぶはっ。藤野さんにはするのかよ」

奈帆(よかった。やっぱりいつもの津雲くんだ)

 今日は外回りはなく、電話応対や、発注作業。
 変わらないはずなのに、隣の津雲が必要以上に気になって仕事に集中できない。

 彼が席を立つたびに、また、どこからか戻ってきて席に座るたび。
 近づく体が触れてしまいそうに思えて気が気ではない。

奈帆(いつもの席にいつもの距離。触れるはず、ないのに)

 彼が動くたび肩を揺らし、赤くなりそうな顔を押え頭を抱えた。


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