Violet Detective
寄生虫学者の研究所
「……ここか……」

私は、お母さんに渡された住所と地図を確認する。

目の前には、東京ドーム三つ分はあるであろう大きな研究所。ここには変わった寄生虫学者二人が住んでいることで有名らしい。

私、三国蘭(みくにらん)は今日からここで居候させてもらう。寄生虫学者とお父さんが知り合いで、「研究所は広いらしい。そこで暮らしたらどうだ?」と言ってきたのだ。

ズキン、と胸が痛む。私は痛む部分に手を当てた。これは体ではなく心が痛がっている。私にはどうすることもできない。

ちょうど家を出ようと思っていたので、お父さんの言葉にはホッとした。それに私は医学生だ。寄生虫に関する病気などを質問できる。

少し震える指でチャイムを鳴らす。変わっている、と聞いたが実際に会ったことなどない。もしも変な人だったら……。

でも、あの家に帰ることはもうできない。歪んでしまった私と家族の関係は、治らない可能性の方が高いのだ。
< 3 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop