Violet Detective

チェックメイト

「ただいま帰りました」

私が学校から帰ると、右京さんと東さんはチェスを楽しんでいた。先手・後手それぞれ六種類十六個の駒を使って、敵のキングを追い詰めるゲーム。

ヨーロッパでは、授業の一つにチェスがあるそうだ。

「う〜ん……。右京、待った！」

東さんが考え込みながら、何度も首を捻る。右京さんはニヤニヤと笑いながら、「待ったはなしだな」と駒を動かす。

数十秒後、東さんは敗北した。右京さん曰く、東さんは右京さんに勝ったことは一度もないらしい。

東さんに前に「やろうよ」と誘われたけど、生憎私はチェスは知らない。

「それで、調査の方はどうだったんですか？」

私はコーヒーを三人分淹れながら訊く。お菓子は、ケーキ屋で東さんが買ってきたシュークリームでいいだろう。

二人は今日、寺井が亡くなった場所へ行き刑事から情報をもらいに行った。右京さんは刑事から頼られることもあるらしく、捜査情報を聞くのは簡単なことらしい。

「寺井の死亡推定時刻は、昨夜三時半から四時ごろ。……ちょうど君が寺井からメールをもらった数十分後だ」