夜明け3秒前
4.薄明
清さんのコテージに来て、約1週間たった今日。
私はあることに奮闘していた。


かき混ぜて、入れて、またかき混ぜる……
焼きあがったら、冷めないうちにトッピングをして……


あまり手先が器用ではない私は、かわいく飾り付けるという工程が苦手だった。
特に生クリームをしぼるのが下手で、ぺたんとなってしまう。

だからここが正念場!
力を入れすぎないように気を付けて……よし、できた!

あとは、チョコスプレーや、アーモンドでトッピングをして……
マフィンの完成!


自分で上手くできた満足感に浸っていると、もう15時だということに気づいた。


大変だ……!
もうすぐ流川くんが帰ってきてしまう。


急いで残りの後片付けして、お皿を用意する。
流川くんと清さんに、すぐに食べてもらえるように。

美味しいって言ってもらえるかな……
一応自分でも味見はしたけれど、とんでもなく不安だ。


こういうとき麻妃がそばにいてくれたら、まずかったらまずい!美味しかったら美味しい!って、正直に言ってくれるからありがたいんだけどな。

ううん、ダメだ。
麻妃に頼ることを少しずつでもやめていかなきゃって思うのに、何かあったらすぐに頭に思い描いてしまう。

でも、麻妃も『ちょっとずつ変わればいい』って言ってたし、少しずつ頑張ろう。


携帯を開いて写真を撮る。
そしてその写真を麻妃に送った。


『マフィン作ったよー!』

メールを送ったのと同時に、玄関の扉が開く音がした。
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