15年目の小さな試練
季節外れのインフルエンザ

季節外れのインフルエンザ

 コンコンッ。

「……ハル?」

 咳の音を聞いた気がして、夜中、オレは目を覚ました。
 なのに、隣のハルはとても気持ちよさそうに眠っている。

「……ん?」

 イヤな予感がする。

 オレは喉に手を当て、喉の奥の異変を感じ取るべくそこに気持ちを集中させた。
 ゴクリ。唾を飲み込んでみる。

 ……痛い。

 ってことは、さっきのはオレの咳か!?

 痛み自体は大したことはない。これくらい全く平気だ。だけど、問題はそこではない。
 隣に眠るハルに目をやる。
 うっすらとした非常灯の明かりに照らされたハルは、オレの動きに気付くこともなく、すやすやと眠っている。表情も至極穏やかで、じっくり観察しても、やはり呼吸が乱れている様子はない。
 ハルは大丈夫。風邪の兆候は見られない。

 ホッと一息つくとオレは慌てて、だけど、決してハルを起こさないように、そっとベッドを抜け出した。
 洗面所に行き、普段はハルが使う体温計で自分の体温を計る。

 ……38度2分。

 最悪。マジで風邪かよ。

 喉の痛みから半ば予測はしていたけど、発熱までしているとは。完全に隔離コースだ。
いや、喉が腫れてる段階で自主謹慎だけど。

 時刻は午前0時半。
 急いでマスクをして、スマホと実家の鍵、それから着替えを引っ掴むとオレは寝室を後にした。



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