少女漫画的事柄
神楽坂玲人

隣の席






「凄いじゃん鈴!やったね、凄いよ!いやあ凄い!ラッキーだよ、良かったね」



「…お、おはよう葵。語彙力が凄いことになってるよ?」







登校時間。上履きを履き替える私の背後から声を掛けてきたのは同じクラスで友人の北条葵だ。



黒く耳の前で三つ編みを編んでいる地味な私とは違い、髪を茶色に染めて垢が抜けている彼女はグロスで光る鮮やかな唇をにんまりとさせながら私の肩をしきりに叩いていた。痛い。かなり。







「ていうか、何が凄いの?」


「またまたぁ、クラスグループの通知見てないって言うんじゃないわよね?…て、その反応。まさか本当に見てないの?」





そっと目を逸らした私を彼女は目敏く見抜いて大げさに驚いて見せた。

勉強と撮り試していたアニメを見ていてスマホを除く時間がなかったことに加えて。葵に招待されて入ったクラスのグループの通知はとてもうるさく、今では通知をオフにして放置していた。







「まあ葵のことだからそうなんじゃないかと薄々思ってたけどね」






納得したように葵は二三回頷くと、悪戯に笑う。








「昨日のSHRあったでしょ?その時、席替えでくじ引いたじゃん?同じ番号同士が隣の席って先生言ってたでしょ?あんた、15番だったって言ってたよね?」




「ああ】




確かに昨日は席替えの為くじ引きが行われた。仲の良い子に同じ番号か確認はしたものの、みんな違う番号だった。


限りなく狭い人間関係のため同じ番号の子を探し出すことはできず、普段あまり喋らない女の子なのか、男子なのかと深く考えずにいた。








「昨日クラスのグループである人が15番の人だれ?って言ってたのよ。さて、誰でしょーう!」






その場でくるりと一回転し私に人差し指を突き付けた葵に私は一瞬たじろく。底の知れない明るさは一体どこから湧いて出てくるのだろうか。









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