極上御曹司のヘタレな盲愛

幸せの行方

あれから…。

私の妊娠を知った両家の親や、水島のお祖父様の行動は早かった…。

私はあの日からずっと大河のマンションで暮らし、あの翌日の午後には私の実家の荷物が全部楽々パックで送られてきた。
あのベッド1つ残して…。

水島のお祖父様の命令で、大河は年が明けるのを待たずにニタドリを辞め、水島の系列会社の一つに専務取締役として就任した。

元々ニタドリに勤めながらも、お義父様との約束で、水島のお仕事にも携わっていたという大河。
来年度早々、代表取締役に就任するらしい。

大河のニタドリ最後の出社の日は凄かった…。
大河にお花を渡してお別れを言いたい社員が列をなし、帰り際、ロビーは人で溢れ、抱えきれない程の花束を持った大河を、本社の8割の女性社員が涙で見送った…。

お祖父様に、系列会社の中でもあまり業績の良くないところを立て直して、周りに実力を見せろと言われているので、今は毎日忙しくお休みもなく働いている。

体が心配だが、とても楽しそうに仕事をしているので見守っているところだ。

大河なら、業績を上げて、その系列会社もきっと立て直せると信じている。

実際、大河が専務取締役に就任してから、社員の士気も随分上がっているらしいし…。
特に女性社員の士気が…。

私はそれを、美味しいお菓子を持ってよく家に遊びに来てくれる義弟の航我君に聞いていた。

大河は
「俺だけが住んでいる時には滅多に顔を見せにも来なかったくせに!」
と、航我君が来るたびになぜか御機嫌斜めで
「アイツと兄貴には気をつけろ!」
と、私に馬鹿な事ばかり言ってくる。

二人とも私の恩人なのに!
特に航我君は私の命の恩人で…しかも、小さい頃から自分の弟のように思っていた航我君が本当の義弟になって、私はすごく嬉しいのだ。


あの日…あんな事を言いながら…。

妊娠している私に大河は何もする事はなく…。
夜も私を抱きしめて眠るだけ…。

忙しいのか私が寝入ったのを確認すると、また起きて書斎に籠って仕事をしている事も多い。

たまに頭の隅っこを掠めるものはあるけれど…私の記憶は相変わらずちゃんと戻る様子はなく、大河と結ばれた時の事や、入籍した時の事もまだまだ思い出せずにいた…。


だから…私は未だ記憶の中では処女で…聖母の心境?だ…。


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