ふわふわ、ふわふわ。
なんか宙に浮いてる気がする…。


「ん……」
なんか頭痛いし、胃が少しムカムカする。
あれ?私…ベッド…いつのまに⁉︎

ぼんやり薄目を開けた私の視界には…。
喉仏と、綺麗な鎖骨…。

ん?
喉仏…?

「ひッ…!♯○△%⁉︎」
叫びそうになった私の口を、大きな手が塞いだ。

「こらこら。こんな早朝から大きな声を出したらみんな起きちゃうだろうが」

耳が震える程の美しいバリトンが上から降ってきたので、私は別の意味で震えあがった。

「た…たいが…」
実際には口を塞がれているので、むーむー言うだけだったのだが。

「叫ぶなよ。迷惑だからな」
大河は念押しして口を塞いでいた手を外すと…。

「おはよう♪」
上機嫌で言って…。

「‼︎⁉︎!」

私のシャツの裾から手を入れ背中に回すと、ギュッと自分の方に抱き寄せ、私のおでこにチュッとキスを落とし…呆然と固まっている私の目を覗き見て、フッと微笑むと…。
…唇に一瞬だけ触れるキスをした…。

「な!な!な!」
なんで⁉︎ 言葉にならない!
次の瞬間、自分の全身が真っ赤に染まるのを感じた。

「ふっ!茹でダコみてぇ…」

なんで⁉︎なんで⁉︎なんで〜⁉︎

これも‼︎ 練習⁉︎

心臓が早鐘のように打ち、弾けそうで怖い!

呆然とする私を尻目に大河は立ち上がり、ふぁーっと欠伸をすると、何時だ?と時計を見た。

「5時か…。他の奴らが起きだす前に、自分の部屋に戻んないとヤベェな…」

螺旋階段を降りかけて、ふとこちらを見る。

まだ呆然とする私に、ニヤリと挑戦的な笑みを浮かべて右手の人差し指で指差すと…。

「慣れろよ。これから毎朝こうだからな。いちいち叫ぶな。呆然とするなよ」

そう訳の分からない事を言って、階段を降りていった。

はっ⁉︎
なんて言った⁉︎
慌てて大河の後から階段を降りていく。

1階リビングのローテーブルには大量のお酒の空き缶や瓶が転がり、その横の床には大の字で眠る光輝がいた。

片腕に美波先輩、もう片腕に恵利ちゃんを腕枕していて、3人とも何かムニャムニャ寝言を言っている。

「すみません…もう飲めません…責任とります…」
光輝は誰かにひたすら謝っていた…。

「常務…もっと飲め…酒が足りない…酒持ってこ〜い…」
美波先輩は自社の常務に更なる酒を要求していた…。

「イケメン……ゲットだぜ…」
恵利ちゃんはフフフと不気味に笑いながら、何かを収集していた…。

「なんだ、これ。メッチャ面白いな。ムービー撮っておこう…」
大河がスマホで撮りだした。

「他の人が起きだす前に部屋に戻るんじゃなかったの?」
と言うと、ああそうだったと光輝を起こし始めた。

「美波先輩!恵利ちゃん!起きて!ベッドに行ってちゃんと寝ましょう!」
私も2人の肩を揺らし、寝ぼけ眼の2人を追い立てリビング横のベッドルームに寝かせた。

「うー〜あー〜頭いてぇ…」
ようやく起き上がった光輝に冷えたミネラルウォーターを渡そうとしたが…。

「両腕が痺れていて腕が上がらない!」
光輝が情けない顔をして言うので笑ってしまった。
両腕枕で眠っていたもんね。

大河にお水を渡すと、さっきの…キスを思い出し、また全身が真っ赤になり慌てて目を伏せた。

大河はそんな私の頭に手を置き、わしゃわしゃと撫でたのでもっと赤くなった…。

「じゃあ、また後でな…」

光輝と大河が部屋に戻ると、私は大量の缶と瓶を片付けて洗い物をした。


大河は本当に何を考えているんだろう。

いくら花蓮に告白するための練習だとしても、あれはやり過ぎだ!
あんな…。

私はブンブンと頭を振った。
私でできる事なら頼み事を引き受けるとは言ったけど…。

無理だよ!大河のバカ!
私のファーストキスを!
やっぱりあの男は天敵だ。

思えば…小さい頃から大河にはずっと意地悪ばかりされてきた。
カエルを握らされたり、大量のゴキブリを投げつけられたり、誕生日に芋虫つきのコスモスを贈られたり…。

これも意地悪⁉︎

私が赤くなったり青くなったりするのを見て楽しんでいるのだろうか…?

「やっぱり……嫌い…」

私は小さく呟いた。