極上御曹司のヘタレな盲愛

テニス大会

全部片付け終わってコーヒーを淹れていると。

「おはようございま〜す。あ!桃センパイ!片付け任せてしまってすみません!」
と恵利ちゃんが起きてきて。

「うー〜飲みすぎたー〜」
と美波先輩が10分後に半分死んだような顔で起きてきたので、二人にもコーヒーを淹れた。

「チェックアウトは14時ですよね。森を抜けた所の湖の畔にあるホテルのパンが凄く美味しいんですけど、後でお散歩がてらブランチに出かけませんか?」

「あ!それ、雑誌に載っていた所ですよね。行きた〜い♪」

「うー〜、私はパス…。部屋で寝てるわ」
美波先輩は顔をしかめてコーヒーを飲み干すと、またベッドの方に戻った。



「あぁ、美味しかったですねぇ」
「うん、久しぶりに食べたけど美味しかった」

ホテルでのブランチの帰り、私と恵利ちゃんは森の中をゆっくりと歩いて戻ってきた。

管理棟横のテニスコートに差し掛かると声がかかった。

「桃ちゃん!テニスやっていかない?」

緑のフェンスの向こうで、高橋君がラケットと ボールを掲げてニッコリ笑っていた。

見ると、営業2課の人達がテニスをしていた。
お姉様方の姿はない。

私の視線に気づいたのか、高橋君が声を潜めて
「大丈夫だよ。水島課長が居ないって知ったら『日焼けするから』って帰っちゃったんだよ。あの人達…」

大河もいないんだ…なら、いいか。

恵利ちゃんに、どうする?ときくと、やりたい!というので混ぜてもらうことにした。

幸い私も恵利ちゃんも歩く事を想定して運動のできる靴だったし、ラケットも貸して貰えるとの事だった。

「おいで〜」「可愛い子大歓迎〜」
と笑顔で迎えてくれる営業2課の人達に、笑顔で頭を下げる。

実は私、中、高とテニス部で、高校の時はインターハイに出場して全国まで行った。
花蓮は光輝達と同じくずっとバスケをやっていて…、テニスだけは花蓮と比べられる事なくできたので伸びたのかなぁと思う。

恵利ちゃんも中、高とテニス部だ。
テニスの話で盛り上がって、より仲良くなったと言ってもいい。
高橋君始め、営業2課の人達もテニス経験者が多く、皆さんとても上手で、久しぶりのテニスはとても楽しかった。

暫くすると「試合やろう!」と誰かが言いだし、クジでペアを組みダブルスでの試合が始まった。

私は高橋君とペアになった。
結構な真剣試合で、勝ち進んでいくごとに白熱した試合になった。

決勝戦は私と高橋君ペアと、美波先輩の同期の皆川主任、恵利ちゃんの同期の鈴木君ペアとの戦いとなった。

金網の外にもいつのまにかギャラリーが増えていた。

一進一退のゲームが続き、最後マッチポイントで私のスマッシュが決まった!

倒れ込んで悔しがる皆川主任と鈴木君…。

振り向くと満面の笑顔の高橋君とハイタッチを交わした。

高橋君はラケットを放り出すと

「桃ちゃん!最高!」

と叫び、私をギューっと抱きしめたので、ギャラリーやベンチで見ていた2課の人達が、一斉にヒューヒューと囃し立てた。

「た…高橋君…くるし…」

あまりにも強く抱きしめられて苦しかったので、背中をタップして離れようとするも、高橋君は私の頭に頬ずりまでしてきた。

もう!どれだけ嬉しいのよ。
私も勝って、とても嬉しいけれども。

そう思っていると…バリッと音がする程強い力で、高橋君と私は引き剥がされた。

驚いて見ると、見た事もないくらい眉間に深い皺を寄せ、怖い顔をした大河が…。

普段よりも数トーン低い地を這うような声で言った。

「高橋…セクハラで訴えられるぞ」

高橋君はハッとしたように
「あ!ごめん、桃ちゃん!つい嬉しすぎて!あ〜俺汗臭いのにごめんな」

訴えないでね、テヘッと笑う高橋君が可笑しくて
「大丈夫よ!訴えたりしないから」

と私もクスクス笑ったが…、心の中では、今朝の大河の事はセクハラで訴えたい!と思っていた。


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