極上御曹司のヘタレな盲愛
「桃センパイ、珍しいですね。いつもは10分前には席に着いているのに。寝坊ですか?」
隣の席の恵利ちゃんに言われる。

課長席で悠太がフッと笑った気がした。

「会社にはとっくについていたんだけどね」

悠太に聞こえるように大きめの声で言い、声を落として
「ちょっと色々あって…」
と言う。

「告白でもされてたりして…」
正面の席の美波先輩がボソッと言った。

「な!なんで!」
なんで知っているの⁈と叫びかけて慌てて口を抑える。エスパーなの⁉︎

「いや、階段室2人で上がっていくの見かけたから…」

美波先輩…恐るべし…。

私はわざとらしく日程表を見ながら
「会議室のセッティングに行ってきま〜す」
とその場から逃げ出した。


それからは美波先輩も恵利ちゃんもなにも言わなかったのでホッとしていたが、昼休みになると2人は、社員が滅多に来ない穴場のパスタ屋さんに私を引きずっていった。

席に着いて『本日のランチ』を美波先輩がメニューも見ずに3人分注文し、周りを見回し会社の人がいない事を確認する。

「白状しなさい!」

腕組みをした2人に迫られて、私は高橋君に『結婚を前提に付き合ってくれ』と言われた事、返事は明日の定時後にすると約束した事を話してしまった。

「はぁ、結婚を前提にときましたかぁ」

「そりゃぁ、自社の社長の娘に交際を申し込むのに、軽々しく付き合って〜って言えないでしょう」

「それにしても仕事早いですねぇ、高橋さん」

「まあ、バーベキューの時から全く隠していなかったからね」

え?そうなの?気づかなかった!と私が言うと。

「気づいていないのはセンパイだけですよ。常務だって『兄の目の前で妹を口説くな』って言ってたじゃないですか」

「水島課長も…鬼の形相だった…」

なぜか美波先輩がブルブルと震えた。
そう言えば先輩と光輝は2人で大河の方をジッと見ていたっけ…。

「テニスの時なんて、高橋さん『好き』が溢れちゃって…桃センパイにハグからの頬ずりまでしてましたよ」

見ているこっちが恥ずかしかった…と恵利ちゃんが言う。

え?勝って嬉しすぎてじゃないの?

「そういえば…あの時も水島課長は鬼の形相だった…」

なぜか恵利ちゃんもブルブルっと震えた。

「水島課長ってさぁ…」
美波先輩が、運ばれてきた本日のランチのパスタをフォークでクルクルしながら言う。

「桃ちゃんの事が好きなんじゃないのかなぁ…」

「は?」

次の瞬間、私は首がもげる程の勢いで横にブンブンと振った。

「いやいや!ないない!それはない!
大河は昔から花蓮の事が大好きなんですよ!」

私は2人に、学生だった頃、大河が学食で友人達に『花蓮は昔から自分のものだから手を出すな』と牽制している所を見た事を話した。

「しかも誕生日プレゼントだって!花蓮には大輪の薔薇の花束で、私にはその辺に咲いていたコスモスだったって言ったじゃないですか!い…も…虫つきの…」

声を張って否定していた私は、芋虫のくだりの所で食事中だった事を思い出し、トーンダウンした。

「とにかく!あの男が私を好きだなんて、あり得ないですよ!昔から意地悪で私が困る事ばかりしてくるんですから!
…今回だって…!」


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