極上御曹司のヘタレな盲愛
言いかけて私はマズイ…と口を噤んだ。
危うく婚約の事を自分でバラしてしまう所だった。

ふぅ、落ち着こう…と小さく深呼吸する。

でも…そうか…。

どうして大河が急に結婚だの婚約だの言いだしたのかがわかった。

バーベキューの時に高橋君が私の事を好きだと気づいた大河は、私を使って花蓮を落とすつもりだったのに…高橋君が私に告白して、万が一私達が付き合ってしまったら計画がダメになると考えて、先手を打ったに違いない!

そういえば私の手を引いて川から戻った後、大河は「電話をかけてくる」と言って消えた。

あの時に私の荷物を運ぶ手配をしたり、婚姻届を準備して貰うように私の両親や大河のお父さんに頼んでいたりしたんだろう…。

恵利ちゃんは高橋君の仕事が早いと言っていたけど、高橋君まだまだよ…。あなたの所の課長の方が仕事が超早い!
凄い危機管理力だわ…。

「で…どうするの?明日返事をしなくっちゃいけないんでしょう?」

「そもそもセンパイは高橋さんの事をどう思っているんですか?」

「う…ん。高橋君とは同期だけど、今までそんなに話した事もなかったの。話してみたら楽しいってわかったんだけど…。でも、男の人として好きかって言われたら…。私今まで男の人を好きになった事がないから…。実は初恋もまだなの…」

「「えっ!」」

2人は声を合わせて哀れむような目で私を見た。

「確かに…浮いた話の1つもないとは思ったけど…まさか初恋もまだだなんて!どれだけ箱入りなのよ!」

「あれだけ顔面偏差値の高い人達に囲まれていたら、その辺の男に恋なんてできないんでしょうか…」

「だって…モテたでしょうに…」

「いいえ!モテませんって!モテたのは花蓮だけです!私は『残念な方』ですから!」

自分で言って哀しくなる…。

でも…高校生の時に…斎藤紫織にも言われたもの…。

『あなたの事を好きになる男子なんて、この世に居ないわ』…って…。

「とにかく明日、高橋君にはその辺の事情を正直に言うしかないです」

「初恋もまだだから、あなたの事を好きかどうかわかりませんって?」

「わぁ高橋さん、そんな事言われたらめっちゃ萌えそう!」

「いっそのこと付き合ってみちゃえば?」

えー〜?

「ちょっと想像してみてよ。高橋君とデートしてる所とか…」

「う…ん、楽しそうです」

「じゃ高橋君とキス…その先も想像してみて…」

高橋君とキス……次の瞬間、ボワんと音がしそうなほど私の全身が真っ赤に染まった。

「む…無理!想像できない…」

高橋君じゃなくて、なぜか大河の顔が浮かんで来ちゃったなんて…絶対に言えないもんっ!


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