ことほぎのきみへ
過去に縛りつけるもの
色々あった旅行から帰ってきた私を待ってたのは


溜まった家事と学校の課題と


「お姉ちゃん、遊んで~」


甘えたがりの妹の相手


洗濯物を干す私の背中にひっつきながら
ねぇねぇと上目遣いで
遊んで遊んでと繰り返す


こんな風になついてくる花菜がとても可愛くて仕方ない

だからいつも甘やかしてしまう


「うん。これ終わったら一緒に遊ぼうね」


本当は洗濯物を干す以外にも
まだまだやらなきゃいけないことがあったけど


「やったぁ~!」


嬉しそうに笑う姿に負ける




花菜は優と違って
あまり学校の友達と遊んだりしない

友達と仲が悪いとか
いじめられているとかそういうのじゃないんだけど

こういう夏休みや、春休み……長期休みの時は
毎回こうやって私の傍から離れようとしない



……その理由が、寂しさからくるものだって分かってるから


私もつい花菜に構ってしまう


もちろん単純にかわいいからっていうのもあるけど



……これもきっと負い目


お母さんが亡くなった時
花菜は今よりもっと幼くて


まだまだ母親に甘えたい時期だったのに
それができなかったから


だから多分

今、こんな風に私に甘えてる



私に『お母さん』を求めてる



お父さんは仕事で忙しいし
優は優で色々難しい年頃だし
甘えられる相手が私しかいないから



「お姉ちゃん」

「なーに?」

「呼んだだけ」


えへへ~っと嬉しそうに抱きつく花菜

その頭を撫でながら


心の中で



……ごめんねって思った
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