「ええ。あのふたりを呼んでくれてありがとうございます。氷堂さまが呼んでくださらなかったら、しばらく会わずにいたかもしれませんもの。感謝しきれませんわ」
興奮気味に礼を言えば、氷堂がニヤリとした。
「だったら、俺はご褒美が欲しいな」
それはいつもの悪魔顔。
「ご褒美ですか? でも……私……なにも持ってない」
なにを要求されるのか少し恐ろしくてビクつく私に近づき、氷堂は私の唇に触れる。
トクンと大きく跳ねる心臓。
「物じゃなくていい。俺のことを『蒼士』って呼んで」
とろけるような笑顔で彼は命じる。
今回は氷堂にたくさん迷惑をかけたし、お世話にもなった。
名前を言うくらいのお願いならいいだろう。
深く考えずに決めて彼の名前を口にするのだが、なかなか声が出なくてつっかかった。
「そ……そ、蒼士」
「うん。初めてにしてはまあまあかな」
上から目線で評価して、至極嬉しそうに笑う彼。
下の名前で呼んだだけなのに、凄く照れくさくて、顔の熱が急上昇する。
なんなのこれ?
頬を押さえる私の顎を掴んで彼がチュッと軽く口づけた。
「上手く言えたご褒美」
不意を突かれてドギマギする私に、蒼士は甘い微笑を浮かべる。
そんな彼の笑顔を見て、キュンと胸が高鳴った。