「綾香、アメリカのイーグル社のCEOが来月来訪するらしい。社長と一緒に対応するから、赤石さんにスケジュール聞いて調整しておいて」
オフィスでメールを見ていたら、蒼士がふらっとやって来て私の肩をポンと叩いた。
ビクッとする私の身体。
もう! お願いですから急に背後から現れないで下さい。
心臓がおかしくなりそう。
「……わかりましたわ」
パソコン画面を見つめたまま、返事をする。
私……変だわ。
昨日退院してから、蒼士のことを直視できないのだ。
秋人さんはまだ警察に捕まっていないが、私達は今まで通り会社で仕事をしている。
蒼士は私のことを心配しているけど、秋人さんに怯えて暮らすなんて嫌だったから、会社に行きたいと主張した。
怖くないといえば嘘になるけど、秋人さんに自分の人生を全部奪われたくはない。
私は私らしくありたいのだ。
まだ蒼士は私の後ろにいて、視線を感じる。
ああ~、次は会議ですわよね。早く行って〜。
ギュッと目を閉じて蒼士がいなくなるのを待つ。
すると、彼が大谷先輩に声をかけた。
「大谷さん、行きましょうか……コホッ」
蒼士が大谷先輩を伴って会議室に向かう。