「あれ? 綾香は?」
ランチミィーティングが予定より早く終わり、海外戦略室に顔を出すと、彼女の姿が見えなかった。
スマホをいじっていた藤原に聞けば、彼は顔を上げてニコッとする。
「綾香ちゃんなら秘書室の子達とランチ食べてるよ。もうすぐ戻って来るんじゃないかな」
「ここ最近毎日だな。まあ、赤石さんや他の秘書室の子達とも上手くやってるみたいで安心したよ」
笑って返すと、藤原は横目でじっと俺を見た。
「よく言うよ。全然心配なんかしてなかったよね?」
そう、俺が綾香を秘書にしたのは、ただのゴリ押しではない。
彼女にはなんというか男女分け隔てなく好かれる不思議な魅力がある。
華があって、知的で、真っ直ぐで、それでいてたまに抜けているところがあって、周りが守りたくなるのだ。
赤石さんは秘書してのキャリアは社内で一番なのだが、一癖あって周りの秘書や役員までもを意のままに操ろうとするところがある。
だが、綾香に心から頼りにされて、赤石さんは悪い気はしなかったのだろう。
入社してから二週間経ったが、赤石さんは綾香のことを可愛がっていて、秘書室の雰囲気も良くなったと、役員達の評判も上々。