最初は社内のルールがわからず綾香は戸惑っていたようだが、今では赤石さんの指導のお陰で秘書がだいぶ板についてきた。
入社してすぐの頃はコーヒーとかよくこぼしたり、移動時間を考えずに予定を組んだりしていたのだが、今はもうそういうミスはない。
「まあね」
藤原の目を見て小さく頷く。
綾香は期待通りの働きをしてくれる。
彼女のためにもうちで働くのはいいことだと思った。
お金の力で彼女を守るのは簡単だが、それでは火事でボロボロになった心は沈んだままだっただろう。
しばらくすると、剣持さんがお昼から戻って来て三人で雑談をしていたら、大谷さんも出先から戻ってきた。
「副社長、表に不審者がいた。ガードマンに伝えておいたけど、花山院商事の関係者かもしれない」
その言葉にオフィスは急に静かになる。
もし花山院秋人の手の者なら、綾香を探しているのかもしれない。
火事で彼女が無事だったのはニュースや新聞で知っているはず。
「わかりました。綾香にも気をつけるように言います」
コクッと頷くと、彼女が軽い足取りで戻って来た。
「あら、もう皆さんお揃いでしたの? 今、コーヒーお持ちしますね」