【完】Mrionation
蜜月の中の疑惑


職場では手厳しい彼が、私のお陰で丸くなったと聞いて、それはそれで如何なものか…と思う今日この頃。

長閑にゆらゆらと揺れる窓の外の木々が、付き合い始めて、3ヶ月過ぎたことを知らせる。

最初はバレンタインデーで告白するつもりだったのに、インフルエンザのせいで出来ずに終わった。

その間に、彼がどれだけ私への想いを募らせていたのかは、分からないけれど…出社してすぐに告白を受けた。

彼は私をとことん甘やかす。
身も心も蕩かすくらいに。
自分の中では有り得ないと決めていた、給湯室でのイチャコラに、まさか自分が加わるとは夢にも思わなかった。
短い時間でも顔を合わせないと、彼は様子を窺うようにして目の前に現れる。


「顔を見たかっただけだから…」


と、満面の笑顔で。


結局バレンタイン当日に渡せなかった品物は、中途半端な時期にチョコとネクタイを手渡し、ホワイトデーはお返しだと言ってご飯を食べに行った時…お揃いのリングを貰った。

まるでお姫様のように軽やかにエスコートされ、帰り際に「好きだ」と告げられる。

そんな日々が続いて、もう3ヶ月が経つんだな…。
そう思うとなんだか、心をくすぐられているようで、自然と笑みが溢れてしまう。


「暁良が何か困ってたり傷付くのは嫌だし許せない」

真剣な眼差しで何度、多少の無理をする私を怒ったことか。

「お前、その内腑抜けになんぞ」

あまりの溺愛ぶりを見ていた松嶋に、痛い所を突かれて、私は渋い顔をした。

だってしょうがないじゃないか…。
相手は"あの"小窪主任。
伊達に今まで色男でいたわけじゃないだろう。
百戦錬磨の恋の達人。

一度陥落させられたら、二度とは戻れない。


で。
蜜月の甘い関係はジャリ甘なんて言葉よりも、更に上を行くズブ甘で…社内恋愛が禁止ではない我社では、既にカレカノというよりも相方状態の扱い。

彼の所属する課の課長から引き抜きが掛かりそうになるほど、仲の良さをオープンにする、彼。


これで、もしも別れる日が来たとしたら…そう思ったらゾッとした…。


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