三月八日の誕生日は今まで生きていた中で一番幸せなものになった。

 雰囲気のあるホテルのフレンチレストランでのお祝いと、数えきれないほどの高価なプレゼント。

 なによりも嬉しかったのは、休日ではないのに、柊吾さんが一日ずっと一緒にいてくれたこと。この日のために遅くまで働き、スケジュールを調整してくれたのだ。

 贅沢な十九歳の誕生日だった。


 それから一カ月が経った月曜日の朝。

 柊吾さんが出社したあと、珍しくお父さんから電話があり、頼みがあるから画廊に来てほしいと言われた。

 頼みってなんだろう?

 お父さんの画廊の本社は銀座にある。久しぶりに出かけることもあり、気分転換におしゃれをする。

 紺色の生地に大きめの赤い花柄があしらわれたAラインワンピースはウエストが絞られ、フリル袖。Vネックからのぞく首元に、柊吾さんからクリスマスプレゼントでもらったネックレスをつけた。

 腕には誕生日にもらった時計をつける。

 これから時を一緒に刻もうという意味の時計を見るたびに顔が緩む私だ。

 外は春の気配を見せ始めている。

 おろしたてのクリーム色の春コートを着た私は家のことを山下さんに任せて、電車で銀座へ向かった。